「権利のみを主張して他人の迷惑を考えない人が増えた」  内閣府の「人権擁護に関する世論調査」によると、八五%を超える人がこう答えたという。

 たしかにそんな気がすると思う人もあるだろう。またインターネットを含めて人権侵害が増えたと感じる人も多くなり、ともに過去最高となったそうだ。内閣府では「他人への配慮がなくなってきている」としているが、要するに自分のことしか考えない人が今までになく増えているということなのであろう。

 このような悪しき波は、能勢の山にも押し寄せてきている。心なきハイカーやドライバーによるゴミや空き缶のポイ捨ては後を絶たない。近隣のお寺では、参詣信徒以外の入山を断っているところもあるほどだ。

 関西身延真如寺では、霊地を清め、参詣者並びに訪れる人々に気持ちよくお詣りしてもらえるよう日々努力しているが、中々思うようにはいかない。互いにご協力いただくほかないのだが、たまに目に余るような人に注意したりすると、逆にくってかかられることすらある。信仰の霊地ということを理解せず、観光地と誤解しているかのような言動に遭い、寂しい思いに駆られることもある。

 周囲への配慮、他人への思いやりというものがないと、自分が唯一正しいものと思いこんでしまう。その結果、自分への注意に対して自分を攻撃する邪悪な意見ととらえ、それを是正しようとする意識が働く。正義の感情とも言うべきもので、実はこれが仏教ではクセ者とされる。正義は瞋り(いかり)を呼ぶもので、問題の解決にはならない。人は自分が正しいと思うから瞋る。間違っていると分かれば引っ込む。正しいと主張するもの同士によって紛争が起こる。だから正義より、周囲への視線、他への思いやりをまず持つことが大切だというのである。

 いつもイライラしている人が多くなっているようだが、まずお互いに周囲に目を向けることで解消されるのではないだろうか。